安倍政権が公的介護保険制度をしれっと改悪しそうなので、もう一度おさらいしよう

安倍政権が、「要介護」に認定される前段階である「要支援1・2」を、現行の介護保険から切り離そうとする動きを見せていますね。

・要支援」介護保険から分離 社会保障国民会議の報告案(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130726-00000021-asahi-pol

平成27年度の法改正でこの改案が実現すれば、軽度とはいえ、介護保険を頼りにしている要支援認定者は切り捨てられることになります。

改悪の恐れがあるのは利用範囲だけじゃありません。下記のように、自己負担額、特別養護老人ホームの入居資格、介護施設の利用料についても改悪されようとしています。

介護保険の改悪案
内容 現行制度 改悪案
要支援(1.2) 保険対象内 対象外へ
介護費自己負担 1割負担 2割り負担、一定所得以上(単身で年金月13万円以上など)や軽度者
特別養護老人ホーム 要介護1以上 中重度者に限定する
介護施設費の負担 住民税非課税 資産次第では対象外に

いくら財政難とはいえ、この見直し案はあんまりですよ。親の介護を見据えている私にとってはゆゆしき問題です。なんだかよくわからない間にしれっと改悪される前に、このブログを通して一人でも多くの人に事の重大さを伝えたいと思います。

改悪されたら

1.全国130万人の要支援者が切り捨てられる

まずは介護保険について軽くおさらいしておきましょう。下の表を見てください。

【参考サイト】医療保険の不要論者だった私がその考えを改めだした理由

基準 状態の目安 状態例
要支援1 日常生活で支援が必要 身の回りの行動に何らかの支えが必要なときがある
要支援2 日常生活で「1」よりも多くの支援が必要 「1」に加え、病気や怪我により心身の状態が安定していない等
要介護度1 部分的な介護が必要 身の回りの行動や移動の動作に支えが必要なことがある。問題行動や理解の低下が見られることがある
要介護度2 軽度の介護が必要 身の回りの行動全般、移動の動作に支えが必要。問題行動や理解の低下が見られることがある
要介護度3 中度の介護が必要 身の回りの行動全般、移動の動作に支えが必要。排泄が一人でできない。いくつかの問題行動や理解の低下が見られることがある
要介護度4 重度の介護が必要 身の回りの行動全般、移動の動作がほとんどできない。排泄がほとんどできない。多くの問題行動や理解の低下が見られることがある
要介護度5 最重度の介護が必要 身の回りの行動全般、移動の動作、排泄、食事がほとんどできない。多くのの問題行動や理解の低下が見られることがある。ほぼ寝たきりに近い
※詳細は厚生労働省要介護認定のページをご覧ください。

ご覧のように、介護保険は「要支援1~2」と、「要介護1~5」の7段階に区分されていて、要支援は、「重度ではないが何らかの手助けが必要な状態」と認定された人たちです。

介護保険事業状況報告年報

※平成22年度 介護保険事業状況報告年報より

認定者数は全国で約130万人。全体から見ると軽度な段階とはいえ、要介護状態にまで悪化しないための要支援ですから、この切り捨て案に怒りをあらわにしている現場関係者の声を耳にします。

2.介護サービスに地域格差が生まれる

介護保険から切り離された軽度者の受け皿は、地域支援事業などに委ねられる予定です。各自治体やボランティアが国に代わって同等のサービスを提供できるならいいですが、心配なのは地域格差。予算も違えばマンパワーも異なるため、介護サービスの水準が全体的に低下することは間違いないでしょう。弱者にとって住みにくい世の中になりそうです。

3.自己負担額がアップ

現行の介護保険料は1割負担ですが、一定所得以上の軽度者に限り、2割負担に増やそうとする動きがあります。月8500円の介護サービス費を支払っている場合、負担は1万7000円にまで跳ね上がることになります。

負担の対象となる所得基準が「単身で年金月13万円以上」という点も問題に感じますね。年金月13万円以上って、そんなに余裕のある世帯でしょうか?上限ギリギリの人はさらに生活が苦しくなると思います。経済的な理由から介護サービスの利用を避け、それが元で状態が悪化してしまう悪循環が起きないかも心配です。

4.要介護2以下は特養から追い出されるはめに

特別養護老人ホームの利用者のなかには、要介護度2以下の軽度者が全体の17%を占めているため、本来サービスを受けるべき重度な介護者たちが入所できていないとの指摘があります。

介護保険事業状況報告年報

※平成22年度 介護保険事業状況報告年報より

これは確かに一理ありますが、要介護2でも支援を必要としている人はいます。要介護3以下の介護者は病院からも追い出され、介護施設からも追い出され、行き着く先は在宅療養。家族が支援できるケースはまだいいですが、家族の介護や看護が足かせ(表現は悪いですが)と なって離職する人が年間10万1000人もいる(※)ことを考えると、特養の入所制限がかかると少なからず影響が出るのではないでしょうか。(平成24年就業構造基本調査:総務省

5.収入がなくても資産があれば

介護施設の部屋代や食費は収入によって徴収される額が異なるのですが(下記参照)、たとえ収入がなくても、不動産や貯金等、資産があれば軽減しないという案が出されています。

介護保険対策委員

参考:大阪社保協 介護保険対策委員

たとえば、要介護度4、年金が月6万円のAさん(男性)がいたとしましょう。負担区分は第2段階ですから、部屋代は820円、食費が390円で1日1,210円、1ヵ月で36,300円になります。

しかし、もしAさんに持ち家があったり、貯金があったりする場合、負担区分は第3段階または4段階が適用され、最高で月100,500円まで負担が跳ね上がることになります。資産があるのだから当然だと思うかもしれませんが、その資産はAさんの妻にとってなくてはならないものかもしれません。夫の持ち家で、夫が残してくれた預金を細々と切り崩しながら生活しているAさんの妻にとって、この負担増はキツすぎます。

民間の介護保険の利用を期待している?

要支援者の受け皿として、地域、家族のほか、民間の介護保険が考えられます。公的制度が利用しにくくなるとあれば、民間の介護保険に注目が集まるのは間違いなく、それは政府の狙いでもあるでしょう。

では、民間の介護保険は使える保険かといえば、これは正直分かりません。しかし、少なくとも、公的介護保険制度が改悪されるのに連動して、民間介護保険も使い勝手が悪くなるでしょう。理由は民間介護保険の給付条件にあります。

民間の介護保険は、各社によって保険金の給付条件が異なります。保険会社が独自に定めているものもあれば、公的介護保険に完全連動している(要介護 2以上と認定された時 等)ところもあり、後者の方が契約者にとって分かりやすいことから、最近は完全連動型が増えてきています。

しかし、公的介護保険制度の利用範囲が狭くなることで、要介護認定そのもののハードルが高くなる可能性があります。「要介護度2から保険金が受け取れます!」と謳われても、これまでとは実情が異なるため、なんだか“お得感”を感じません。制度の改正を受けて保険会社が給付のハードルを下げてくれるといいですが、そんなに甘いものではないでしょう。かといって、保険会社独自の基準はさらに厳しく、指定の介護状態になってもすぐには保険金を受け取れない「待機期間」が設定されています。

このように、公的制度の利用範囲が縮小することで民間保険が影響を受けるのは必至。「公的介護保険がダメなら民間へ~」などと簡単には考えられないということです。掛金もアップするでしょうしね。

さいごに

以上、駄文ではありますが、改悪案の危険性について思うことを書いてみました。私のような一般人だけでなく、多くの介護・医療関係者の方からも同様の意見を聞き、大変心配しています。どこかの市長さんみたいに「じゃあ代案を出せよ」なんて言われると困ってしまいますが、一般市民なりにできる限りのことはやっていきたいと思っています!


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安倍政権が公的介護保険制度をしれっと改悪しそうなので、もう一度おさらいしよう への4件のコメント

  1. きつね より:

    同じく親の介護が迫っている年代の者ですが、
    この記事のように提議しても、結局は問題を先送りにするだけで何も解決せず
    いずれ何処かの世代がまとまったツケを払う事になるだけだと思います。
    結局避けて通れない道なのではないでしょうか?

    どこかの市長じゃないですが
    方針としては受け入れつつ、介護者の負担度合いを見ながら段階的に実施していくべき、といった代替え案を唱えていくべきだと思います。

    • nicehack より:

      >きつねさん
      コメントありがとうございます。確かにご指摘はそのとおりかとも思います。私も考えるできること、考えられることを具体的な形として発信していこうと思います。ありがとうございました!

  2. 秋本英雄 より:

    しっかり読みましょう。